ブラッディ・ロマンス。【短編】

血の鉄臭い味が口に広がる。


舌の先に、錠剤が乗せられ、

あたしはそれを飲み込んだ。



「ヒナ、ヒナ、好きだ。オレのそばにいて」



唇を離し、うわ言のようにつぶやくと、

またキスをする。



その言葉で、体が熱くなった。


いつの間にか止まっていた涙が再びあふれる。



でも、今の涙は悲しい涙ではない。


彼の言葉が嬉しかった





ああ、あたしも好きなんだ。



その思いが、ストンと胸のうちで落ち着く。


< 60 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop