ブラッディ・ロマンス。【短編】

オレは雛野の頭を引きよせ、耳元にささやいた。


「でも、こんなことみんなに言われたくないでしょ? オレのお願い、聞いてくれる?」



理性のブチ切れたオレは、

自分が何を言っているのか、わかっていなかった。


わかっていたら、こんなことは言えない。



彼女がキスに酔ったなら、

オレは血の香りに酔っているんだ。



甘く、


魅惑的な香り。




雛野は必死に首を横に振っているけど、もう放すことはできない。


「嫌じゃないだろ」



腰を上げて、逃げようとする彼女と瞳を合わせると、

そのまま視線を下げ、首筋に狙いを定める。


雛野が気づく前に、オレは自分の牙をその柔らかい肉に突き刺した。

< 66 / 114 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop