ブラッディ・ロマンス。【短編】
オレは雛野の頭を引きよせ、耳元にささやいた。
「でも、こんなことみんなに言われたくないでしょ? オレのお願い、聞いてくれる?」
理性のブチ切れたオレは、
自分が何を言っているのか、わかっていなかった。
わかっていたら、こんなことは言えない。
彼女がキスに酔ったなら、
オレは血の香りに酔っているんだ。
甘く、
魅惑的な香り。
雛野は必死に首を横に振っているけど、もう放すことはできない。
「嫌じゃないだろ」
腰を上げて、逃げようとする彼女と瞳を合わせると、
そのまま視線を下げ、首筋に狙いを定める。
雛野が気づく前に、オレは自分の牙をその柔らかい肉に突き刺した。