ブラッディ・ロマンス。【短編】
雛野を触っていると、不意に彼女が痛がっていたことを思い出した。
「ごめん、痛かった?」
「い、痛みはもうないけど、神藤くんってなんなの?」
雛野はオレの手を振り払い、自分の手で首筋を隠す。
オレは振り払われた自分の手を見た。
彼女の仕草がオレへの拒絶に思えて、悲しかった。
「うーんと、吸血鬼」
雛野が謝ろうとしてくれたけど、オレはわざと遮るように、彼女の問いかけに答えた。
謝罪されても、拒絶された事実は消えない。
血を吸うなんて、普通の人に受けいられるわけがないとわかってはいる。
だけど、雛野は違うと期待していたのかもしれない。