ブラッディ・ロマンス。【短編】
それに、今の足音。
誰かに見られた。
オレが後ろを振り返ると、柏木の血の匂いに混じって、
自分の匂いとヒナの血の匂いを感じた気がした。
オレはそれに気づいた途端、柏木を押し返した。
「悪い」
そうつぶやくと、柏木の顔も見ないまま背を向け、階段を駆け下りた。
ヒナ、ヒナ…!
柏木の血の匂いにあたっていたから、自信があるわけじゃない。
気のせいであってほしい。
祈るように思いながら、急いで教室に戻ったけど、そこに笑うヒナの姿はなかった。
誰もいなかった。