ブラッディ・ロマンス。【短編】
ヒナに見られたかもしれない。
そんな嫌な予感はおさまらないまま、翌日の朝になった。
オレは教室に入ってきたヒナの姿を見ると、すぐに彼女の前に立った。
「昨日、なんで先に帰ったんだ?」
ヒナは悪くない。
だけど、怒ってでもいいから、オレを待っていてほしかった。
そんな思いで、不機嫌な声になってしまう。
ヒナに柏木とのやり取りを見られて、誤解されたかもしれないなんて、
未だに考えたくなかった。
いや、誤解も何も、流されそうになったことは事実だけど、
あの匂いは単なる気のせいで、あの場にいたのは別の人間だと信じたかった。