Limiter

9.ラスソン

DAY:2008/8/8



12時過ぎに居酒屋を出て「COLORS」に向かう途中、
「COLORS」の現No.1と遭遇した。
ハヤトが真っ先に気づき、新人らしく元気に「おはようございます!」と挨拶をする。
するとNo.1は一瞬キョトンとし、「ああ! おはよう」とワンテンポ遅れて答えた。
ハヤトがあまりにも普通の格好をしていたせいか、
同じ店で働く後輩ホストだと気付かなかったようだ。
そのことに私は爆笑しつつ、12時半前に店に着いた。

ヨレヨレの私服から細見のスーツに着替え、ようやくホストらしくなったハヤトが卓に着き、
まず今日の予算を聞かれた。
きっと予算内で納めようというハヤトなりの気遣いだったのだろう。
しかし妙に機嫌の良かった私は、

「その時の気分で♪」

と陽気に答えていた。
これがある意味、私がどっぷりとハヤトにハマるキッカケになったのかもしれない…


同伴によりますますハヤトが気に入った私は、
気分の良さも手伝って、勢いよく鏡月を飲み始めた。
私は緑茶割。ハヤトはピーチ割で。

この日はハヤトのお客さんがもう一人来ていて卓が被っていた。
同伴しているときから、お客さんが来る予定があると事前に聞いていたので、
とくに気にすることも無かった。
さらにハヤトは、一方の卓に着いても長居はせずに、短いスパンで2つの卓を上手く行き来している。
それを見て私は関心した。

前の担当である聖司からいつも放置をくらっていた私からしたら、それはとても嬉しいことだったのだ。
ハヤトが、私ともう一人のお客さんを平等に扱っているのがよく分かる。
おかげでまったく焼き餅を妬くことなく、寂しくなることも無かった。

「ハヤトがすぐに戻ってきてくれるから嬉しい」
素直にそう言うと、

「一息ついてタバコを1本吸い終わったら卓を移るようにしてるんだ」
と、ハヤトは答えた。
なるほど。と納得し、私の機嫌はさらに良くなった。
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