Limiter
「やった!! すごいハヤト! すごいすごい!!」

私は興奮して思わず叫んだ。
朝っぱらの人通りがまばらなアーケード街に歓声が響き渡る。

「興奮しすぎだって。俺ら変なバカップルみたいに見られるよ」

ハヤトにそう指摘され、私は慌てて声を潜めた。
それにしたって、一発でカピパラさんを取ってしまうなんて、すごい。
これは興奮せずにはいられないだろう。

しばらくしてゲーセンが開店し、ハヤトは店内にあるいくつかのUFOキャッチャーにもチャレンジしたが、結局取る事が出来たのは最初のカピパラさん1体だけだった。

まさに奇跡のカピパラさんだ。


ゲーセンを出た後、私達はすすきの方面へ向かって歩き始めた。
途中、肉を揚げる香ばしい匂いが漂ってきて、ハヤトは足を止めた。

「俺、ケンタッキーで一度も食べた事がないんだ」

衝撃的なことを聞いてしまった。

「え!? マジで? 一度も!?」

「うん。地元の帯広にはケンタが1件しかなくて、しかも実家から遠かったし」

私が物心つく前から当たり前のように身近にあったケンタッキーの味を知らない人が居るとは…
カルチャーショックを受けてしまった。

「せっかくだから食べてっていい? 人生初のケンタッキー」

まるで悪戯っ子のようにハヤトがニヤリと笑う。
もちろん!と私は頷いた。
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