Limiter
しばらく彼らと行く行かないの押し問答をし(本当は行く気満々だ)、私好みの男の子はチラシ代わりのうちわをくれた。
彼が店に電話をすると、どうやら今から行っても大丈夫のようだ。

てっきり私は彼らが店まで連れて行ってくれるものだとばかり思っていたのだが、
昨今の厳しい風営法による取締りのせいで、お店までお客さんを連れて行くというキャッチ行為は出来ないと言う。
つまり店まで一人で行けと。

私は「一人で行くのはイヤだ」と渋った。
初めて行くお店に一人で乗り込むのは、さすがに酔っていても気が引ける。
そうしたら、3人のうち一番好みじゃない男の子が店の近くまで連れていってくれることになった。

がっかりした。

正直言うと、私好みの男の子が店まで連れて行ってくれるかもという期待もあったから、
「一人で行きたくない」とごねたのに…
これなら一人で行った方がまだマシだったかも…
と思いながら、私は好みじゃない男の子と少し距離を開けながら歩いた。

「このビルの6階だから」というホストの言葉に頷いて、
私は一人でエレベーターに乗り込み、6階で降りた。

降りてすぐ目の前に店はあった。
実はこの箱、「COLORS」が入る前に別のホストクラブが入っていて、私はつい半年前までその店に3ヶ月間毎週のように通っていたのだ。
だからこの箱のことは良く知っている。
もちろん一人で来ようと思えばなんぼでも一人で来れたのだ。


半年振りに訪れるその箱に、私は少しドキドキしていた。
何かを振り払うかのように勢いをつけて、
私はジャカジャカとビルの廊下にまで音の漏れるトランスが響く店内に、足を踏み入れた。


「いらっしゃいませっ!!」

ホストクラブ特有の、威勢の良い声に迎えられる。


入ってすぐにあるキャッシャーは、毎週のように通っていた半年前と、ほとんど変わっていなかった。
多少内装が変わって前よりも綺麗になっていたが、卓の配置などはほとんど変わっていなく、
なぜかそれにほっとした。
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