将棋少女
…冗、談?
気の抜けた体を椅子が受け止める。
香歩さんの冗談は、まるで冗談には聞こえない。最大の欠点だ。
「あまりウケないのね。私の冗談」
「……冗談には全然聞こえませんでしたもの」
「あらそう?でも、実際に私を妬んだり恨んだりする奴はいるのよ」
そう言って香歩さんは足下の鞄から一冊の本を僕に手渡す。
何だこの本。表紙はまるでマジックで塗りつぶされたような黒で薄い本だ。
けれど中を開くとすぐに本の正体はわかった。
「数学の教科書、ですか?」
でも、中は至る所が破れてたり切られたような後があって、自分でやったとは思えない。
頭に浮かんだのたった一つだった。