将棋少女
「いじめ。ですか」
香歩さんは、それの何が可笑しいのだろう。
口端を吊り上げ薄く笑った。
「多分、そうでしょうね。けどそんな事はどうだっていいのよ」
「どうだって、いい?」
「ええ。どうでもいい。クラスメート、教師、両親、顔も知らない他人。それらは私にとって無価値に他ならない。
私に必要なのは、将棋盤、駒。少し欲を言えば君も、かな?」
……っ!?
突然の一言は僕を硬直させるのには十分過ぎる威力だった。
「どうしたの顔を赤くして」
「……してません」
僕を一瞥する目は笑っている。
どうにも僕は将棋にしろ私事にしろ香歩さんに振り回されている気がする。