将棋少女
三手、びしょ濡れの制服と『金将』



* * *


具合が悪い。


急に。と言うわけでもなく朝から体調は芳しくなく二時限目の休み時間を利用して保健室に来た訳なのだけど。


香歩さんがいた。


どういうわけかびしょ濡れの状態で。


「どうしたんですか、プールにしてはもう寒い時期ですけど?」


「寒中水泳に興じてみたのよ。悪い?」


見れば香歩さんの足元には水たまりが出来ていて、今もまだ水滴の落下は続いている。


「私みたいな敵の多い人間にはね、トイレに入ると何故か上から水が降ってくるのよ。それこそバケツをひっくり返した様な水がね」


手に持ったベージュ色のタオルで長い髪をぞんざいに拭い、香歩さんは言う。


「それって、いじめ。…ですか?」


「あなた昨日も同じ事言ったわ」


香歩は小さくため息をついた。


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