将棋少女
不意に足音が消えた。
代わりにポスンと言う音が聞こえて、また保健室に静寂が宿り始める。
……これはまた香歩さんの手を聞き逃したかな。
「ねぇ」
「ひゃい!?」
後頭部に投げかけられた香歩さんの声に僕はうまく反応出来ず変な声が出た。
「君もこっち来なさい」
「へ?」
後頭部に投げかけられたのは次の一手じゃなくてそんな言葉。
「い、いや。こっちと言われても」
香歩さんにそんな格好されたら僕の方が恥ずかしいわけで。
けど、そんな僕の心を読んだ様に香歩さんが言う。
「タオルで隠してるから大丈夫」
「本当ですか?」
チラリと、肩越しに香歩さんを覗く。確かにタオルで隠してはいる。
ホッとしたような、なんだか残念なような。