将棋少女
慌てて逃げ出すように首ごと逆方向にそらすが、顎に手を添えられ再び視線を邂逅させられた。
「あの、その」
いや。本当に目のやり場がなくて、けど僕の一応思春期な部分がまぶたを閉じる事を拒む。
眼球は右に左に、僕の理性と欲情を抱えて動き続けて。最終的にーー
パン。と両頬を香歩さんに挟まれ標準を合わせる所で止まった。
「にゃ、にゃんですか」
両頬を挟まれてるせいで上手くしゃべれない。
多分タコみたいな口になってるんだろうな僕。
香歩さんの黒目がちな双眸が僕を射抜く。
髪の毛から一滴、水滴が落ちる。
濡れてるせいなのか、はたまた蛍光灯の無機質な灯りのせいなのか。
ただでさえ白かった香歩さんの肌は尚更に白く見え、そして。
怖いくらいに綺麗な顔が僕の視界の全てになった。