将棋少女
手渡されたのはデジタル目盛りの体温計。
「体温を計ってから処方するから」
「はぁ」
体温計を脇の下に挟む。先端が少し冷たい。
「いいわよ、その辺に座って」
「あ、はい」
促されてさっきまで自分の座っていた椅子に腰を下ろしーー……あれ?
「……ん?どしたの、キョロキョロして」
「いえ、香歩さんはどこへ」
あぁ。短く言葉を漏らし保健医は僕とは逆方向に首を向ける。
視線の先には三台のベッド。そのうちーー
「君と桂さんがエロい事してたベッドで寝てるわ」
「いや、だからですね」
「ジョークよジョーク。男の子なら女性のジョークには笑うのがマナーよ?覚えときなさいね」
「……」
体調不良に加えて頭痛までしてきた。