将棋少女
何を話した?
と言われても、話した内容なんて目隠し将棋位の事。
最後に香歩さんが呟いた言葉だって結局聞き取れてはいない。
それに、僕が香歩さんにとっての何なのかなんて質問は僕に聞くのはあまりに残酷な気がする。
「こないだ、香歩さんに言われました。僕は将棋の対戦相手だ。って」
多分、それ以上でもそれ以下でもない。
僕はただの対戦相手なのだ。
代替の効く対戦相手。
「なるほどね」
けれどそう相槌を打つ保健医の表情は僕とは違って嬉しそう。
なんで保健医は嬉しそうなのか、僕にはわからなかった。
「あぁ、ごめんね。笑ったりなんかして」
「……いえ」
等間隔のリズムを刻んでいた万年筆が今度は指揮棒のように宙を踊り始めた。