将棋少女
「襲われてた。って、でも君自体まんざらでもなかったでしょ?」
「は?」
「またまた。隠さなくてもいいわよ。あんなんでも顔は美人、それに下着姿の先輩に押し倒されて何にも感じませんでしたなんて事はないでしょ?もしそうだとしたらあなた完全に病気よ?」
そんな事を言われても。
……いや、何も感じなかった訳じゃない。このまま、学校ではアレな事になるんじゃないか?って想像まで行ったけど、やっぱり僕自身の恥ずかしさの方があったし、何より。
「その時の香歩さん。すごく寂しそうでした」
「……」
宙を泳ぎ続けた万年筆は、疲れたのか保健医の胸ポケットへと帰還する。
お留守になった手は、今度は髪の毛をいじり始める。
落ち着かない人だ。僕は心の内でそう保健医を評価した。