将棋少女
「……言うとね。私があの子にしてあげられる事はほとんどないの」
「そうですか?僕よりよっぽど香歩さんは先生を頼りにしてると思いますけど?」
けれど保健医は何も言わず、くるくると髪の毛を指に絡ませ、解いては絡ませを繰り返す。
「僕は、言ってしまえば将棋の駒と盤がなければ不必要な人間です」
「私は将棋の駒と盤があってもあの子からすれば不必要なのよ?」
「そんな事ないですよ」
「そんな事あるのよ。私が出来るのはカウンセリングと味方になってあげる事だけ。対戦相手にはなれないの」
「そんなのルールが分かれば誰でも」
「私こうみえてもアマ女流トーナメントで上位に食い込む実力よ?」
アマ女流の上位……。僕より、文字通り数段強いじゃないか。
でも、なんで香歩さんは相当強い保健医とじゃなくて僕を対戦相手にしてるんだろう。