将棋少女



「なかなか、恥ずかしい事言うのね。君」


「はぐらかさないでください」


静かな言葉の応酬。盤面は駒の取り合いになっている。


香歩さんは訥々と駒を動かすが、それに置いてかれないように僕は思考を巡らせる。


「勘違いしないで。私は別に、他人なんていなくてもいいの。それはあなたと保健医も含めて」


「……なら、聞かせてください。なんで保健室で僕にあんな事したんですか」


駒の取り合いから転じて次は取っていった駒を次々に盤面へと投下していく。


いつの間にか僕の手は防戦へと切り替えさせられていた。


「……あれは、ただの悪ふざけよ。他意はないの」


防戦をえぐり始める盤面の兵達。そこに僕は違和感を感じていた。


いつもの香歩さんじゃない。


いつもの香歩さんの手じゃない。


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