1000文字の話。
物凄い風を引き連れながら降りてきたリュイの口には、大きな鳥が咥えられている。

『シオンも食べる?』

『いや、いいよ。』

僕はリュイの申し出を笑顔で断ると、リュックの中から硬くなったパンを取り出した。いくら新鮮だといっても、生肉には抵抗があるし、火を起こすのは、ここでは命取りになりかねない。

僕の考えを知ってか知らずか、リュイは咥えていた鳥を地面に置くと、ちろちろと炎を見せる鼻で風の匂いを嗅いだ。

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