幸運の器
悠斗は、再び走り出していた。

(華音だ!)

悠斗の頭の中は、その考えにとりつかれていた。

華音がなぜ葵をさらうのかわからないが、それでももうそれしか考えられない。

しかし、少し安堵もしていた。

華音だったら、葵に何か危害を加えるはずがない。

それでも、何かに追われるかのように悠斗の足は動き続けた。

いったいどこをどう走ってきたのか自分でも良くわからない。

気づくと、見覚えのある風景の中に迷い込んでいた。

長く続く生垣。

まるで永遠に途切れないのではと思わせる。

間違いない。

華音の邸、百目鬼家だった。
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