幸運の器
悠斗の瞳にはそういう光景が写っていた。

「な…に、してんだ、華音……」

華音は、その声で初めて悠斗に、というより他に人がいることに気づいたようにハッと顔を上げた。

その華音の顔も、葵と同じように蒼白い。

「お主…なぜ、ここに……」

華音の掠れるような声が遠くに聞こえる。

華音は、まだ何かを言っているようだった。

しかし、次第に悠斗の耳には外界の音は何も聞こえなくなっていった。

逆に、悠斗の内側から響き渡る警鐘が耳を突く。

そして、得体の知れない力が噴き出そうとしていた――。
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