幸運の器
隣の一磨に視線を向ける。

しかし、一磨は相変わらず無表情で腕を組んだままだった。

上昇はそんなに長くは続かなかった。

再びエレベーターは沈黙すると、今度こそ本当にドアが開いた。

ドアの外には一畳ほどのスペースがあり、それ以外は銀色に光り輝く扉があるのみだった。

高級感のあるマンションには少し不釣合いに思えるその無機質の扉に、悠斗は何となく違和感を覚えた。

エレベーターは静かに扉を閉め、そのまま下降していった。

一磨は無言のまま、その扉の前に立つと手をかざした。

すると、カチッという音がしたかと思うと扉が音もなく開く。
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