幸運の器
悠斗はそれだけ言うと、カノンに背を向けて歩き出した。

この子には悪いと思うが、悠斗には他にどうすれば良いのかわからない。


いったい今、カノンはどういう表情をしているのだろうか?

もしかして、泣いたりしていないだろうか?


自分で突き放しておきながら、カノンのことが妙に気になって仕方がなかった。

そのまま歩き続けていけばいい、そう自分に言い聞かせてみるものの一度気になってしまったものは、もう無視することができない。


「あー、もー!」

悠斗は耐え切れなくなって、後ろを振り返った。
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