幸運の器
「いいか、桜井。器を失うことと奪われることは全く別のことなんだ。器を奪われたヤツには

――不幸しか訪れない」

一瞬何を言われたのかわからなかった。

「何だその顔は?もう一度言うか?」

悠斗は首を横に強く振った。

聞こえていなかったわけではない、ただ認めるのが怖かった。

あの日、初めて百目鬼家に行ったとき華音に自分の器を取り出してみろと言った。

そして華音は実行した。

もし、あの時成功していたのであれば、あの後の不幸はそのためだったのかと理解もできる。

「あの、オレ華音に自分の器を取り出してみろって言って……」
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