幸運の器
一磨の言うとおりだった。

そんなことはなかったのだ

葵とのひと時の逢瀬。

あの時は、もう死んでもいいと思えるほど幸せだと感じていた。

「じゃあ、何で……」

「葵が死にそうになってるかってことなら、それは葵こそ器を奪われているからさ――」

「葵が?何で、ですか?」

そこで一磨は怒っているような悲しんでいるような複雑な表情を見せた。

「それこそ――俺が、原因だ。葵は器のことや組織のことなど何も知らない。なのに俺の側にいたばっかりに組織に目をつけられた」
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