幸運の器
「そうだ。器を失ったからって不幸になるわけではない。でもな、器を無理やり抜き取られた人間は違う。――――不幸なことしか起こらなくなってしまうのさ」

一磨は吐き出すようにそういった。

悠斗は驚きのあまり何もいうことができなかった。

「俺は、ボスにどうにかならないのか詰め寄った。でも、どうすることもできないと言われた。そんなことで諦められるわけないだろう?自分のせいで妹を不幸に……」

「あの、でも、不幸が続くといっても何も命を落とすことなんて――」

「落とすんだよ」

「えっ?」

「器を奪われた人間は、7年後に死ぬ。例外なくな。そして、今年がその7年目だ」

「そんなこと、華音は何も言ってなかったですよ。華音が嘘をついているようにも見えなかったし……。そんなの、冗談、ですよね?」

「冗談でこんなこといえるか?百目鬼の現当主は幼すぎる。だから、周りがまだ全てを教えていないんだろう。でも、葵はこのままだと今年死んでしまうんだよ!」
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