幸運の器
「どんな結果になろうとも、やっぱり俺はお前に葵を託して良かったと思ってる」

手を離すと一磨はそういった。

「そんな、オレ本当に何も……」

一磨は静かに首を横に振る。

「お前と一緒にいる間の葵は、その宿命から切り離されて幸せそうに見えた。おそらくこの7年間で初めての感情だろう」

悠斗は唇をかみ締めた。

悠斗にとっても葵と過ごした日々は特別なものだった。

何としても葵を助けたい。

再びそう強く心に誓い一磨の顔を見る。

一磨は悠斗の顔を見るとにっこりと笑った。

「じゃあ、また明日連絡する」

「はい」

短い言葉を交わすと、悠斗はマンションを後にした。


~告げられた真実 完~
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