幸運の器
祥子の顔はまたあの時のように真っ青になっている。

「おい、祥子大丈夫か?」

悠斗は祥子の肩を抱くと、近くにあったベンチに腰を下ろさせた。

「うん。ごめん、ね」

「オレは別に大丈夫だけど……」

心配そうに祥子の顔を覗きこむ悠斗から逃げるように、祥子は顔をそらす。

「少しだけでいいの。話を、聞いて」

訴えかける視線はないが、祥子の哀願するようなその声に拒否することはできない。

「あ、あぁ。わかった。話してみな」

そこで、祥子は最近のある出来事について話し出した。
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