幸運の器
「何で、お前……。いや、今はいい。それより、お前葵を助ける方法知ってるんだろう?頼むから教えてくれ!」

匠は不思議そうに首を傾げる。

「何で僕がそんなこと教えるんだい?葵ちゃんをあんな状態にしたのは僕なんだよ。だいたい――」

匠はそこで言葉を止めざるを得なかった。

怒りをあらわにした悠斗が匠の襟首を掴んだからだ。

「お前!!何でなんだよ!何でそんなことを!!」

「理由は聞かないんじゃなかったのかい?」

匠は悠斗の手を払いのけると、襟を正しながら冷静にそういった。

「――チクショウ!」

悠斗はやり場のない怒りを、拳に込めて側の机を思いっきり殴った。

そんな様子を匠は悲しそうな顔をして眺めていたが、悠斗はそれには気づかない。
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