幸運の器
「別になにも。おまえ自身が僕に何か害をなすことなど一度もなかった。ただ、お前の存在自体が僕の運命を縛り付けていたのさ」

「何言ってんだ、匠。オレ、お前の言ってる意味が全然わかんねーよ」

「そうだろうね。悠斗は、ずっと今まで何もかも恵まれた環境で育ってきた。だから、僕の本当の気持ちなど気づきもしなかっただろうね」

「匠?」

匠は静かに歩き出した。

悠斗もそれに従う。

「僕がこの小学校に転校してきたのは、悠斗がいたからなんだよ」

「オレが?何でオレがいたらここに来なくちゃいけないんだよ?」

「僕の父親がね、ある組織のボスなのさ」

悠斗は思わず足を止めた。

匠は、それには構わずどんどんと先に進んでいく。
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