幸運の器
匠は、どうしてもカノンのことが気になるらしい。

まあ、それは至極当たり前のことでもあった。

明らかに、異質なこの少女はどうやっても目立つ存在だ。

しかし、悠斗はどう説明したらいいのか言葉に詰まる。

「まあ、何と言うか……」

そんな悠斗を尻目に、カノンの視線は匠に釘付けにされていた。

「おい、カノン?」

カノンは、一瞬ビクリとしたがすぐに我に返り、急な別れを告げた。

「急用を思い出した。また日を改める」

それだけ言うと、カノンはそのままスタスタと歩き去っていった。
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