幸運の器
「ねえ、悠斗!」

誰かが、呼んでいる声が聞こえる。

「いい加減、起きろ!」

その言葉と同時に、頭に鈍い痛みが走った。

「いってー。何だよ――」

頭をさすりながら、渋々顔を上げると、そこには悠斗の元カノ長谷川祥子がいた。

「何だ、祥子かよ……」

「何よ、その言い草。せっかく起こしてあげたのに!」

よく辺りを見回してみると、もうすでに薄暗くなり始めている。

記憶にあるのは、午後一の講義の途中まで。

たしか、あの時は匠と一緒のはずだった。
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