幸運の器
その時、周囲が急にざわめきだした。

「あっ、幹事が動き出したみたいだね。さすがにこれじゃ、交流などもてそうにないもんねー」

あまりにも膠着状態にある現状を変えるために、どうやら店を移動することに決めたようだった。

それに伴って、二つあった大きな輪が解かれていった。

「あっ、今入ってきたの匠君じゃない?私ちょっと呼んでくるね」

そう言い残して祥子は匠の方へ向かったが、悠斗には一切何も聞こえていなかった。

悠斗の視線は、先ほどまで輪の中心にいた人物の一人に釘付けにされている。
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