幸運の器
「あの……」

悠斗は思い切って、その女の子に話しかけた。

一瞬ビクリと体を震わせて、恐る恐るという感じで悠斗のほうを向いたその子と視線が合わさった。

その瞬間、今まで感じたことがないような感覚が悠斗の中を駆け抜けた。

自分のその戸惑いを悟られないように、殊更いつもの調子で悠斗はさらに彼女に話しかける。

「はじめまして。オレ文学部一年の桜井悠斗。君は?」

「えっと、あの……。ごめんなさい!」

いきなりその女の子は頭をさげて、悠斗に謝った。
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