幸運の器
さっきのちょっと茶化したような様子とは一変して、真剣な顔に変わって匠は葵を見つめた。

「ねえ、葵ちゃん。悠斗ってちょっと八方美人なところがあって、女の子には大抵優しいけど、葵ちゃんに対する気持ちは本当だよ。それだけは、信じてあげて欲しいな」

匠はそこで一度口を噤むと、葵のことを優しい眼差しで見つめる。

「それから悠斗について、知りたいことがあったら、いつでも僕に連絡くれればいいから」

さっきまでとは違った雰囲気に、葵は顔を上げて匠を見た。

匠の瞳は、まっすぐで嘘偽りがないように見える。

葵は、この人は信頼できる人だと確信した。
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