幸運の器
「別の件って……」

「それは、今は関係のないことじゃ。それより、お主、何も知らないまま我に器を奪われることを望むか、それとも、なぜ奪われるか知ることを望むか?」

カノンは、綺麗に澄んだ茶色の瞳をまっすぐに悠斗に向けたまま尋ねた。

「それは……」

悠斗には、器は渡さないという選択肢はないようだった。

もし、そうなら訳のわからないまま何かを奪われるというのは癪に障る。

「――わかったよ。話を聞くよ」

「そうか。それが良かろう。では、ついてまいれ」

そう言って、カノンはスタスタと歩き出した。
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