幸運の器
どのくらい経っただろうか。

悠斗もいつの間にか眠ってしまっていたらしい。

「桜井悠斗。もうすぐ到着じゃ」

一瞬、悠斗は自分がどこにいるのか見失っていた。

その声の主を見つけて、やっと自分がカノンの車に乗っていることを思い出した。

「何だよカノン。脅かすなよな」

悠斗は一度頭を振って、眠気を覚ますと窓の外を眺めた。

そこに見えたのは、どこまでも続くかのような長い生垣だった。

その生垣に終わりなどないように見える。

しかし、しばらく走ったところでやっとその生垣の切れ目が見えた。

その切れ目と思えたものは、立派な門になっていた。
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