幸運の器
車は、躊躇なくその中へと滑り込んでいく。

門柱には『百目鬼』の文字。

(ひゃくめ…おに?なんて読むんだコレ?)

そんな悠斗の戸惑いなど無視するかのように、車は門の中をさらに進んでいく。

「おい、カノン。ここ、どこだ?」

カノンは、例の人を小馬鹿にしたような視線を向け、軽くため息をついた。

「はぁー。何を聞いておるのか……。ここは、我の邸じゃ。――降りるぞ」

ちょうどそこで、車は停車した。

車から降りると、まるで時代が逆行してしまったかのような感覚に襲われた。

そこには、老舗旅館のような立派な日本家屋が存在している。

いったいどのくらいの広さがあるのか、悠斗には想像がつかなかった。
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