幸運の器
「おかえりなさいませ、姫様」

突如、背後で声がした。

いつの間に近づいてきていたのか、振り返ってみると、そこには大柄でがっしりとした体格の男がいた。

黒いスーツを隙なく着こなし、夜だというのに何故かサングラスをしている。

「ああ、龍ヶ崎か……。今、帰った。して、準備は出来ているか?」

「はい。全て滞りなく」

どうやら、二人は主従関係にあるようだった。

もちろん、カノンが主でこの龍ヶ崎と呼ばれた男が従だ。

「では、桜井悠斗、まいるぞ」

カノンは、こっちの驚きなど全く無視して何の説明もないまま、またスタスタと歩き始める。

悠斗としてはいつまでもカノンのペースに引き込まれるのが嫌で、思わず関係ないことを口にしていた。
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