幸運の器
悠斗は、自分が今見ているものが信じられなかった。

これが、華音の言っていた特殊能力というものなのだろう。

こんなものを見せ付けられてしまったら、もう信用するしか他にない。

しかし、不思議と悠斗は自分の中に何の変化も認められなかった。

光が引いて目が慣れると、そこには思ってもみなかった光景が映し出されていた。

目の前にきちんと座っていたはずの華音が、血の気の引いた真っ青な顔で倒れている。

「おい!華音!」

悠斗のただならぬ気配に、外で待機していた龍ヶ崎が顔を覗かせた。

その一瞬で事態を察したのか、急いで華音を抱きかかえるとそのまま母屋のほうへと連れて行ってしまった。

悠斗は、ただ呆然とその場に座り込んで動けずにいた。
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