幸運の器
しばらくすると、龍ヶ崎が戻ってきて悠斗に今日はこれで帰るようにと促した。

「あの、華音は?」

帰ることに異論はないが、華音のことが心配だった。

「何も心配はいりません。少し気を失っているだけです。しばらくすれば目を覚ますでしょう。さあ、お宅までお送りしますので急いでください」

龍ヶ崎はそれ以上のことは教えてくれる気はないようにそのまま背を向ける。

悠斗は、後ろ髪をひかれるまま百目鬼家を後にするしかなかった。

百目鬼家に来たときと同じように、座り心地の良い車に乗せられる。

ただ違うのは、隣には華音ではなく龍ヶ崎がいるということだった。

ちょうどいい機会だと思い、龍ヶ崎に華音のことを聞こうと思った。
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