幸運の器
悠斗に笑顔でそう言われてしまうと、葵は抗うことが出来なかった。

「う…ん、じゃあ、やってみる」

葵は恐る恐る、バッターボックスに立った。

いくら一番遅い球速だといっても、初めての葵にとってはものすごいスピードでボールが向かってくるように感じられる。

「きゃあ!」

葵は、思わず目を瞑ってバットを振り回し、その反動でその場に尻餅をついてしまった。

「あははは。葵、ダメだよ。目を閉じちゃ。最初は無理にバットを振らなくてもいいから、とりあえずボールを最後まで見るようにしてごらん」

悠斗には、葵のどんな姿でもかわいく見えて仕方がなかった。
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