幸運の器
慌てて葵の後を追ったが、どこをどう移動したのか葵の姿はどこにも見当たらない。

「葵……」

しばらく、悠斗は事態の急変に対処することが出来ず立ち尽くしていたが、そんなことをしている場合ではないと思い直し、葵の家へと向かった。

葵は、兄の一磨と二人で都内一等地の高級マンションに住んでいた。

エントランスで、葵の部屋番号をコールするが反応がない。

まだ帰っていないのか、それとも悠斗に会いたくないのか……。

それでも、諦めきれず葵の携帯へと電話する。

しかし、携帯も電源が切られているのかすぐに留守電へと変わってしまう。

念のため、留守電にメッセージを残すが空しさだけが残った。

悠斗は今までに感じたことがないほどの、不安を感じ素直に家に帰ることが出来ず、夜の街を当てもなく歩き回った。
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