幸運の器
そこでまた葵は沈黙してしまった。

「ちょっと待て!電話切るなよ!」

悠斗は、その沈黙が怖くてとにかく何か話さなくてはと焦るばかりで、それ以上の言葉が出てこない。

『悠君……』

「なんだ、葵!」

葵の言葉にすがりつく。

『悠君にお願いがあるの』

「お願い?」

今の悠斗なら葵のどんな願いだって聞き入れるだろう。

「なんだよ、言ってみな」

『今度の日曜日、付き合って欲しいところがあるんだ』

悠斗にとっては、葵に会えるのならどんなところにでも行くつもりだった。
< 98 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop