アイツとコイツは許嫁。
「おはよう琥珀ちゃん!」
摩央観察に若干集中していた自分に気づき、その心を振り払うようにぶんぶんと頭を振ったのち、声をかけてくれた人物の方に目を向けました。
「おはようございます、水樹さん」
その人に向かってやんわりと微笑みました。
「裕介でいいって言ってんのに!」
「いや、もうこっちの方が慣れてしまったもので」
「敬語もやめて欲しいんだけど?」
「前から言っていますように癖なのです。もう直りません」
「ちぇー」
水樹さんは学校で唯一普通に話すことが出来る人です。
男の人ですが、そんなもの些細な問題でしかありません。
信頼するに値します。
「ところでさ?」
水樹さんは摩央のいる方に目を向けました。
「あの人は何?」
・・・摩央のことでしょうか?
「高見沢とかいう態度のデカイ奴」
態度、デカイですわよね。
分かりますわ。
その意見にとっても賛成ですが、なぜそんなことをわたくしに聞くのでしょう?
「・・・ひとまず人間であることは多分確かですが」
摩央の方を見ながら嫌味をたっぷり含ませて言いました。
水樹さんは一瞬驚いたような顔になって、そして笑い出しました。
「いや、違う違う!それは分かってんだけど、なんで一緒に学校に来たのかっていうこと」