アイツとコイツは許嫁。


・・・琥珀は何にすんの?


ふとそんなことを思った。


まだ琥珀は黒板に自分の名前を書いていなかった。


・・・やっぱダンスだろ。


「ええーと、一応書いてもらったんですけど借り物競走がとても多いので数名ダンスに移ってくれないでしょうかぁー?」


女の実行委員が叫んだ。


・・・てかまだ書いてない奴いるんだけど。


例えば琥珀とか。


もしかしてこいつだけ?


ダンスのところにはまだ誰も名前を書いていなかった。


それより何で借り物競走こんなに人気なの?


借るものが『好きな人』とかになったらどうするつもりなんだよ。



ガタッ



不意に琥珀が席を立った。


つかつかと歩いて黒板の方に行った。


うるさかった教室がだんだん静かになっていく。


クラスのほとんどが琥珀の方を見て黙っていた。


黒板にチョークがぶつかるカッカッ、という音が教室に響く。



『東宮琥珀』



ダンス希望のところにそう書いてあった。


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