アイツとコイツは許嫁。


「・・・ちっ!」


無性にイライラして近くの机を蹴っ飛ばした。



ガシャンッ



その音に誰もが反応してこっちを向いた。


俊哉たちも俺のほうを見た。


その視線にもイラついて、俺は教室を出た。


担任がいなかったのが不幸中の幸い、なんて冷静に考えてる自分に笑いが込み上げてくる。


琥珀が水樹って男と話してるのが嫌なわけじゃない。


これは確実。


琥珀が誰と話してようと、そんなの制限しようと思わない。


でも仮にも、形だけでも『許婚』という関係になっている俺より、あの水樹って男を優先した行動に腹が立った。


あの男との絆の方が深いのかもしれない。


こんな喧嘩はしょっちゅうだ。


でもあからさまに『俺が悪い』というような琥珀の行為に今回はなぜか、すっげえ腹が立った。


行き場のない憤りを抱えながら、行く当てもなく歩き続けた。


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