アイツとコイツは許嫁。
鞄を持って帰る生徒が俺とすれ違うたびに、好奇の目を向けてきた。
そうされるたびに俺の中の何かがぶっちぎれそうになったが、何とか睨むだけで済ませた。
「・・・くそ・・・」
あれから無駄に歩きまくって、結局教室のすぐ近くの階段に座っていた。
半時間くらい、こうしている気がする。
廊下の窓から差し込むオレンジ色の光がやけに眩しかった。
今の俺のどろどろしとした心とは正反対で・・・。
「・・・カッコわりぃ・・・」
無意識に言葉がこぼれた。
でもなぜか、どうしてもさっきの出来事からは吹っ切れなかった。
今は琥珀とは顔を会わせ辛い。
それに教室に行ったとしても、かなり居づらい。
けど、あんまり帰りが遅いと琥珀の両親が心配しかねないからな・・・。
そう思った俺は嫌々ながら、重たい腰を上げた。