アイツとコイツは許嫁。
自分から折れるのは、俺のプライドが許さない。
そう思った俺は、
「帰るぞ」
それだけ琥珀に言おうと思っていた。
・・・が、その必要はなかったと後々知る事になる。
「摩央ーッ!」
向こうから息を切らして走ってくるちっちゃい奴。
・・・俊哉・・・。
正直、どんな顔をしていいのか分かんなかった。
でも、男にしては小さい体に鞄を2つぶら提げて、よたよたと走ってくるのを見ると、不思議と笑みがこぼれてくる。
・・・相変わらず、弱々しい奴。
「・・・お前、何やってんの?」
俺の元にたどり着いて、手を膝についてゼエゼエ言っている俊哉に聞く。
ちなみにそれは俺の鞄?
「・・・ま、・・・なっ、もっと・・・はあ、はあ・・・」
・・・『まなもっと』?
相当疲れてんな。
何でそんなに走ってたわけ?