微温湯〜ぬるまゆ〜
今思い返しても、濃い高校生活だった。

生徒会と文化祭の実行委員にあけくれた3年間。
藤井君と知り合ったのもそのコミュニティがあったからだった。


高校時代、私には憧れの先輩がいた。笠島さん。
その人に近づきたくてそこに足を踏み入れた。

まだ自分の存在を認識してもらう前に、笠島さんに暑中見舞のハガキを送って自己紹介したことがある。

今、振り返ると私ってすごい行動力だ。
きっともう、そんな挑戦はできないんじゃないかな。

奇跡的に返事が来た。
印象だけで憧れていたが、妄想した通りの、少し叙情的な人だったようだ。
(その後、笠島さんの卒業まで暑中見舞、年賀状の行き来をしたのだ!)


彼には好きな人がいたけど、その恋も私と同じ片思いだった。

私の慕う気持ちは伝わっていたと思う。
でもその憧れは儚く、切なく、進化しないものだった。
叶わないと知っていながら、思わずにはいられなかった。
同じように笠島さんの恋も、停滞前線のような片思いだった。

よどみ無く、空気の流れが止まったかのように感じていた。まるで触角を損失して進む方向がわからなくなった蟻のように、ずっと一点をうろうろしていた。

まるで微温湯につかっているようだった。
生まれて初めて、微温湯につかっているような心地よさを感じた恋だった。
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